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東京地方裁判所 昭和54年(ワ)5144号 判決 1981年8月07日

原告 凪幸世

右法定代理人親権者父 凪栄介

同母 凪久子

右訴訟代理人弁護士 吉原大吉

被告 株式会社イトーヨーカ堂

右代表者代表取締役 伊藤雅俊

右訴訟代理人弁護士 的場武治

同 栗林秀造

同 吉成昌之

同 市川昇

同 鈴木健司

同 飯塚俊則

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は、原告に対し、金一〇二二万二五五一円及びこれに対する昭和五三年七月一二日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行宣言。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文第一、二項と同旨。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  (当事者)

原告は父訴外凪栄介と母訴外凪久子の長女(昭和四八年一二月二三日生まれ)であり、被告は千葉県市原市五井所在のイトーヨーカ堂市原店(以下「本件店舗」という。)を経営する百貨小売業等を目的とする株式会社である。

2  (事故の発生)

訴外凪久子は、昭和五三年七月一二日買物のため、長女原告(当時四歳)及び長男訴外凪大介(当時一歳)の両名を連れ、本件店舗を訪れたが、同日午後零時五〇分ころ同店舗三階から二階へ降りるエスカレーター七号機(以下「本件エスカレーター」という。)に、長男大介を右手で抱き、左手で原告の手を引いて、原告と同一の踏段(ステップ)に乗り二階へ向った。そして、本件エスカレーター中間付近で、原告は、本件エスカレーターの踏段と左(上から下に向って左。)側板(スカートガード)との間に生じていた約一センチメートルのすき間(ガードギャップ)に左手親指をかみ込まれて、負傷した(以下「本件事故」という。)。

3  (被告の責任)

被告が占有し、かつ、所有する本件エスカレーターには、以下の設置・保存に瑕疵が存在した。

(一) 本件エスカレーターには、踏段と側板とのすき間をおおい、事故を防止するために側板に取り付けられるひさしがない。

(二) 本件エスカレーターの踏段と側板との間には、一ないし一・五センチメートルのすき間があり、はさまれ易い状態であった。

(三) 本件エスカレーターには、停止ボタンの位置が表示されていなかった。

(四) 本件エスカレーターには案内係が配置されていなかった。

(五) 本件店舗内は多衆の顧客が集まる場屋であるにもかかわらず、被告はエスカレーターに乗ったときの注意につき顧客に周知徹底させることを欠いていた。

4  (損害)

原告は、本件事故により左手開放骨折、長母指伸筋断裂、左前腕挫創(剥皮創)の傷害を受け、次のとおりの損害を受けた。

(一) 治療費(中間金一万八八三一円)

原告は、本件受傷により、昭和五三年七月一二日から同年八月二六日まで医療法人芙蓉会五井病院へ入院し、右同日退院し、現在に至るまで同病院に通院し、治療を受けている。

退院した右同日から同年一一月末日までの通院治療費は、合計金一万八八三一円となる。

(二) 入院雑費(金二万七六〇〇円)

入院期間四六日間の入院雑費としては、一日金六〇〇円が相当であり、合計金二万七六〇〇円となる。

(三) 付添費(中間金一七万〇五〇〇円)

原告の入院期間(四六日)中、原告の母訴外凪久子が付き添い、右付添費としては、一日金二五〇〇円が相当であり、合計金一一万五〇〇〇円となる。

原告は、一週間に三日通院し、これにも訴外凪久子が付き添い、右付添費としては、一日金一五〇〇円が相当であり、昭和五三年八月三〇日から同年一一月末日までの合計三七日間で合計金五万五五〇〇円となる。

(四) 通院交通費(中間金二万四四二〇円)

右通院交通費としては、一日につきタクシー代金六六〇円が相当であり、昭和五三年八月三〇日から同年一一月末日まで合計三七日間で合計金二万四四二〇円となる。

(五) 整形手術関係費(金一五〇万円)

原告は、負傷部分の機能回復のため将来において整形手術を受ける必要があり、この手術料、入院料、入院雑費、付添費としては、合計金一五〇万円を下らない。

(六) 逸失利益(金四四六万一二〇〇円)

原告は受傷当時四歳であったが、本件受傷により通常人の有する労働能力を一部喪失(自動車損害賠償保障法施行令別表の第一〇級七「手のおや指の用を廃したもの」に準ずる。)し、よって将来労働によって得られるべき収入の一部を得ることができなくなった。原告の就労年数を二〇歳から六〇歳までの四〇年間とし、収入については昭和五三年度の賃金センサス産業計企業規模計女子労働者高専・短大卒の平均給与額金一九二万五九〇〇円(年間)で固定し、ライプニッツ方式を用い、労働能力喪失率を一〇〇分の二七として計算すると、逸失利益計算額は金八九二万二五〇〇円(一〇〇円以下切捨て)となるが、半額を差し引き、内金として金四四六万一二〇〇円(右同切捨て)を請求する。

(七) 慰謝料(金三〇七万円)

原告が本件受傷当時四歳の幼女であること、前記受傷部位であり、手術は二回したが、現在も左手親指が用をなさず、指の開きも悪く、完治が困難であり、左手から腕にかけて生涯傷痕が残ること、前記のとおり、入院後現在まで通院していることを考慮すると精神的損害の賠償としては入院慰謝料金二〇万円、通院慰謝料金四五万円、後遺症慰謝料金二四二万円合計金三〇七万円が相当である。

(八) 弁護士費用(金九五万円)

本訴追行のために要する弁護士報酬は、金九五万円で、本件受傷により原告が蒙った損害である。

5  よって、原告は、被告に対し、民法七一七条一項に基づく損害賠償として合計金一〇二二万二五五一円及びこれに対する不法行為の日である昭和五三年七月一二日から完済まで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1の事実中、被告に関する事実は認め、原告に関する事実は知らない。

2  同2の事実中、原告の母凪久子が昭和五三年七月一二日買物のため原告を連れて本件店舗を訪れ、同日午後零時五〇分ころ本件エスカレーターに乗り、原告が左手親指を本件エスカレーター中間付近の踏段と側板とのすき間にはさんで負傷した事実は認める。その余の事実は否認する。

3  同3の事実中、被告が本件エスカレーターを占有し、かつ、所有する事実及び同項(一)、(四)の事実は認め、(二)(三)(五)の事実は否認し、被告の責任について争う。

4  同4の事実中、本件事故により原告が左手親指を負傷した事実は認め、その余の事実は争う。

5  (被告の主張)

(一) (本件エスカレーターの安全性について)

(1) 本件エスカレーターは、建築基準法三四条一項、同法施行令一二九条の一一第一項一号、建設省通達「エスカレーター安全対策標準」(昭和五二年一月一九日建設省住指発第二五号)の定める次の安全対策を備えていた。

(イ) 乗降口に近い位置にスカートガード・スイッチ(側板に強い力が加わった場合に作動する自動停止装置)を設け、かつ、異物が側板と踏段とのすき間に引き込まれ難くするために、側板に潤滑剤を塗布していた。

(ロ) 上下両乗降口付近に各一個設けられる運転操作盤に非常停止ボタンを取り付け、とくに本件エスカレーターの非常停止ボタンの周囲には非常停止ボタンの所在を明示するステッカーがはられていた。

(ハ) 踏板の両側端及び踏段後部の三方に幅二〇ミリメートル以上の黄色の注意標色(デマーケーションライン)を施していた。

(2) 本件エスカレーターの踏段と側板のすき間は、昇降機の検査標準(JISA四三〇二―一九七五)の定める「エスカレーターの全長にわたって二ミリメートルないし五ミリメートル程度でほぼ一様になっている」状態を優に充足し、とくに本件事故のあった本件エスカレーター中間部左(上から下に向かって左)側におけるすき間は、本件事故当時二・五ミリメートル以下であった。

(3) 本件エスカレーターは、踏段と側板とのすき間から乗客の足を離隔させるために、踏段の両側端のクリート(突起)が、一段高い構造になっており、更に、らんかん部の側板をおおう役割の内デッキは側板を超えて踏段の上方にひさし状に張り出した構造となっており、踏段と側板とのすき間から乗客の足の接近を防止している。なお、エスカレーターはその性質上踏段と側板のすき間を完全におおいつくすことは不可能である。

(4) 被告は、店内放送によって、利用者に対し、「利用者はベルトにつかまって踏段中央部に乗るよう、とくに、子供連れの場合には、保護者はベルトにつかまって子供と手をつなぎ、子供は踏段中央に乗せるよう」注意を喚起し、更に、本件エスカレーター内側パネルにはったステッカー及び本件エスカレーター乗り口に立てた注意標示板によって、同趣旨の注意喚起及び指導を行っていた。

(5) 被告は、専門業者である日立エスカレーターサービス株式会社に委託して、毎年一回前記建築基準法に基づく定期検査を実施するほか、毎月二回自主的に前記検査標準により定期点検を実施しているところ、本件エスカレーターは、本件事故発生前の昭和五三年度定期検査(六月二日実施)並びに同年六月分(一三日、二七日実施)及び同年七月分(五日、一八日実施)の定期点検のいずれの場合においても前記検査標準を充足・維持しており、更に、右店内放送、立看板、ステッカーについてもこれらの定期点検時、毎日始業前の点検及び営業時間中の随時の点検において、その正常な状態にあることが確認されていた。

(6) 本件エスカレーターに案内係の配置を欠いていた点は、法令・通達に抵触しないのみならず、エスカレーターの普及の著しい今日、右事実をもって、エスカレーターについての瑕疵とはいえない。

(7) 以上のとおり、本件エスカレーターは、事故防止につき、法定の安全基準を満たすのみならず、今日の技術水準における最善の構造及び安全対策を備えており、その設置・保存に瑕疵はなかった。

(二) (本件事故の原因―原告側の故意・重大な過失)

本件事故は、原告の左手指が踏段と側板とのすき間にはさまれるという、エスカレーターを通常の利用方法で乗る限り起こり得ない態様で発生した異常なものである。

すなわち、原告の母訴外凪久子は、原告の左手親指が踏段と側板との間にはさまれたことに全く気づかず、事故発生後、原告の左手親指がぶら下がっているのを見て初めて、事故に気がついたという有様で、エスカレーターに乗るに際し、幼児である子の安全に注意を払うという保護者として当然払うべき注意を怠っているすきに、原告が故意又は重大な過失によってその左手親指を踏段と側板とのすき間に突込んだため、本件事故が発生したものである。

(三) (結論)

本件事故は、原告のエスカレーターの通常の利用方法でない乗り方、すなわち原告の異常な行動に起因するものであって、本件エスカレーターの設置・保存には瑕疵がなく、右瑕疵の存在に起因するものではない。

したがって、原告の本訴請求は棄却さるべきである。

第三証拠《省略》

理由

一  (当事者)

請求原因1の事実中、原告に関する部分は《証拠省略》から認められ(原告の生年月日は昭和四八年一二月一三日である。)、被告に関する部分は当事者間に争いがない。

二  (本件事故の発生)

請求原因2の事実中、訴外凪久子が昭和五三年七月一二日買物のため原告を連れて本件店舗を訪れ、同日午後零時五〇分ころ本件エスカレーターに乗り、原告が左手親指を本件エスカレーター中間付近の踏段と側板とのすき間にはさんで負傷した事実は当事者間に争いがない。

次に、本件事故のその他の態様について検討するに、《証拠省略》と右争いのない事実を総合すると次の各事実が認められ(る。)《証拠判断省略》

1  訴外凪久子は、昭和五三年七月一二日買物のために長女原告(当時四歳)と長男大介(当時一歳)を連れて本件店舗を訪れ、買物、食事等をして、三階で子供服を見た後、同日午後零時五〇分ころ二階へ降りるエスカレーター乗り口のある三階フロアに至った。

2  それまで原告が左足のサンダルのボタンをはずしたままだらしなくサンダルをはいていたので、母訴外凪久子は同三階フロアで原告に対し左足のサンダルのボタンをとめるように注意したが、原告は同フロアではサンダルのボタンをとめなかった。

3  そして、訴外凪久子は長男大介を抱いて、原告と共に三階から二階に降りる本件エスカレーターに乗り、原告と同じ踏段の三階から二階へ向かって右側に、原告はその左側に位置したが、訴外凪久子は原告の手をつないでいなかった。

4  原告は、本件エスカレーターの踏段の上で、三階フロアで母訴外凪久子から注意されたサンダルのボタンをとめようとして、前かがみになったところ、右同日午後零時五〇分ころ、本件エスカレーターの三階と二階との中間付近で誤まって、前に倒れ、左手を本件エスカレーターの左側の側板と踏段との間にはさみ込んだ結果、左手開放骨折、長母指伸筋断裂、左前腕挫創(剥皮創)の傷害を負った。

5  その際、原告の左手は瞬時のうちに本件エスカレーターの踏段と側板との間から出てきたが、訴外凪久子はその時点に至って初めて本件事故に気づいた。

したがって、本件事故の直接の原因は、原告が本件エスカレーターの踏段の上でサンダルのボタンをとめようとして、誤まって、前に倒れ、左手を本件エスカレーター左側の側板と踏段との間にはさみ込んだことにある。

三  (被告の責任)

請求原因3の事実中、被告が本件エスカレーターを占有し、かつ、所有する事実並びに(一)及び(四)の事実は、当事者間に争いがない。

そこで、被告が占有し、かつ、所有する民法七一七条一項所定の工作物である本件エスカレーターの安全性につき検討するに、《証拠省略》及び本項冒頭の争いのない事実を総合すると、次の各事実が認められ(る。)《証拠判断省略》

1  本件エスカレーターは、本件事故当時、(イ)スカートガードスイッチ(側板に強い力が加わった場合に作動する自動停止装置)が乗降口に近い位置に設けられ、かつ、靴等の異物が側板と踏段とのすき間に引き込まれ難くするために側板に潤滑油が塗布され、(ロ)上下両乗降口付近に各一個設けられる運転操作盤に非常停止ボタンを取り付け、(ハ)踏段の両側端及び踏段後部の三方に幅二〇ミリメートル以上の黄色の注意標色が施されていたが、これらの安全対策は、踏段と側板とのすき間に人又は物がはさまれる危険を防止するために規制している建築基準法三四条一項、同法施行令一二九条の一一第一項一号、建設省通達「エスカレーター安全対策標準」(昭和五二年一月一九日建設省住指発第二五号)の定める安全対策標準に合致していた。

2  本件事故当時、本件エスカレーターの踏段と側板とのすき間は、全区間三・五ミリメートル以下に保たれており、特に本件事故の発生した中間付近の三階から二階に向かって左側では二・五ミリートル程度で、右すき間の状態は、エスカレーターの所有者に対し定期的に建築士又は建設大臣が定める資格を有する者の検査を受け、その特定行政庁に報告することを建築基準法一二条二項で義務づけているが、右定期検査の基準とされている昇降機の検査標準(JISA四三〇二―一九七五)の要求する踏段と側板とのすき間は二ミリメートルないし五ミリメートル程度でほぼ一様になっているという状態を充足していた。

3  本件事故当時、本件エスカレーターは、踏段と側板とのすき間から乗客の足を離隔させるために、踏段の両側端のクリート(突起)が一段高い構造になっており、エスカレーターの内側の側板をおおう役割の内デッキは側板を超えて踏板の上方にわずかではあるがひさし状に張り出した構造となっており、踏段と側板のすき間から乗客の足等の接近の防止を図っていた。

4  被告は、本件事故当時、本件エスカレーターの乗り口に「ベルトにおつかまり下さい。お子様は中央にお乗せ下さい。」との標語を文字及び図案で表現した注意標示板を設置し、本件エスカレーターの乗り口の内側パネルに右同趣旨を文字及び図案で表現したステッカー並びに「幼児のひとり乗りはけがのもと」との標語を文字及び図案で表現したステッカーをはりつけ、かつ、エスカレーターに乗るについての注意事項を店内放送し、もって、エスカレーターの乗り方について、乗客に対し、注意を喚起し、指導を行い、併せて、本件エスカレーターの非常停止ボタンの周囲に非常停止ボタンの所在を明示するステッカーをはって、非常時に備えていた。

5  本件エスカレーターは日立製作所製造に係り、昭和五一年六月に、本件店舗の三階と二階を結ぶために設置されたもので、被告は、以後本件事故が発生した昭和五三年七月一二日までの間に右エスカレーターにつき、前記建築基準法一二条二項の規定による昭和五一年六月三日の竣工検査、昭和五二年六月七日、昭和五三年六月二日の各定期検査、その他に月二回の定期点検を、エスカレーターの点検整備の専門会社である訴外日立エレベーターサービス株式会社に委託し、実施させてきた。そして、本件事故の前月の昭和五三年六月二日実施の定期検査並びに同年六月一三日、二七日、同年七月五日各実施の定期点検の各結果においても前記各安全対策を含め、各検査項目につき本件エスカレーターのベルトの下の照明の一部を除いて異常は認められず、過去に事故が発生したことはなかった。

6  本件エスカレーターは、昭和五三年六月二七日、同年七月五日の各定期点検の際、パネル内の照明(ランプ)の一部が切れていたが、在庫品がなく、本件事故当時も右ランプが切れたままであり、また本件エスカレーターには案内係を配置しておらず、本件事故発生後エスカレーターを停止させるのに若干の時間を要した。

そこで、原告が本件エスカレーターの踏段の上でサンダルのボタンをとめようとして、誤まって、前に倒れ、その左手を本件エスカレーター左側の側板と踏段との間にはさみ込んで発生した本件事故の原因となる設置・保存の瑕疵が本件エスカレーターに存在したか否かについて検討するに、右1ないし5の各事実に照らすと本件エスカレーターに本件事故の原因となるその設置・保存の瑕疵が存在したとは認められず、右6の事実中、本件エスカレーターに案内係が配置されておらず、本件事故発生後エスカレーターを停止させるのに若干の時間を要した点は前記二の5の事実に照らすと本件事故と相当因果関係があるとは認められず、照明の一部が切れていた点も本件事故と相当因果関係があったとは認められず、案内係を配置していなかった点はエスカレーターが、著しく普及し、性質上利用方法如何によっては危険なものである旨の認識が広く行きわたっていた本件事故当時の状況に照らすとそれが直ちに本件事故の原因となる瑕疵とはいえず、その他本件全証拠によるも、本件エスカレーターの設置・保存につき少なくとも本件事故の原因となる瑕疵の存在を認めることはできず、結局、請求原因3は理由がない。

四  (結論)

以上の次第で、本件エスカレーターの設置・保存につき少なくとも本件事故の原因となる瑕疵が存在したとは認められず、右瑕疵の存在を前提とする原告の本訴請求はその余の点につき判断するまでもなく、理由がないので、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判官 宮﨑公男)

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